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2023年5月21日日曜日

GPT以前以後で仕事関連の本との付き合い方が変わるだろう

 2022年より前に出版されたテクノロジー系の書籍への興味が急速に減退した、というのは僕だけじゃないはず。


そして2023年以降に出版されるテクノロジー系書籍、いやそれだけに留まらないな、すべての仕事に関連する書籍は、AIに読み込ませて、要約させて、質問に答えてもらうための栄養にされちゃうことになる。

「メディアはマッサージである」とマクルーハンは言ったが、まさにAIはツボ押し名人だ。凝っている辺りまで誘導する必要はあるけど、ひとりでは手が届かない場所を押さえ始めてる。

2021年5月14日金曜日

ただいま

 最初の晩御飯にリクエストしたのは「キャベツとミンチの重ね煮」。

ロールキャベツを「巻くのが面倒」とミルフィーユみたいに交互に重ねてみたら、子供たちに大ウケ。すっかり「我が家の定番」になった。
我が家の前に立つ。キンコーーン。
中でドタドタと走って近づいてくる様子を想像する。
ガチャッ「おかえりー!!」次女の声が打ち上げ花火みたいに花開く。
僕は深めに息を飲み込んで
「ただいまーー!!」

受動から能動へ

 入院時に病室まで案内頂いた看護師が産休に入る今日、僕も退院することになった。

通常食になってから、みるみる身体のコツを取り戻した。壊れた腹筋の、どの部分を、どこまで使えるか把握できたことが大きい。あと執刀医の「採血ほどの出血もない見事な手術」と夜通しサポート頂いた看護師さんたち、そしてOnlineから見守り頂いた皆さんのおかげです。執刀医も看護師さんも家族も僕もビックリな回復ぶりです。
「元気な赤ちゃん、産んでくださいね」
看護師さんは眉を少し上にゆるめて「はい。ありがとうございます」と会釈した。背後の窓から朝日が差し込んでた。昨日の雨はすっかりあがってる。
それからしばらく僕は妻の出産の日を思い出してた。
ーー分娩室。
1分置きに襲う痛みの度に、こめかみから頬、あごを経由して首筋に青い血管が波立った。何か別の生き物に進化しちゃわないか気が気じゃなかった。もっと強く手を握りたいけど気後れしてただ手を重ねていた。痙攣と悲鳴が3回あった後に、長女が生まれた。
それまで僕は、毎日みんなに平等に与えられる24hという時間は「神様からのプレゼント」と思ってた。
でも人生のスタート時点は明らかに違ってた。それは紛れもなく『母と本人が命がけて勝ち取ったモノ』だった。
ーー時間は与えられるのでなく、実は勝ち取ったもの。
これは受動から能動への大転換だった。
僕は今また、食事ができるようになった。歩けるようになった。声が出せるようになった。だから今日は家族の待つ家まで歩いて帰りたい。
能動は、今できること、今あるものを明確にして力を与えるんだ。

2021年5月13日木曜日

デイトレーダーがやってきた

 ワンさんとふたりのガランとした部屋に新入りがやってきた。その男は僕よりひとつ若いデイトレーダーだった。

同世代の僕たちは意気投合、お互いのことをよく話す。がん手術予定の彼からすれば、僕に『1週間後の自分』を見てるのだろうし、僕からすれば、命懸けのジャングル探検の奥地で人類発見!みたいな喜びがあった。
僕たちは自分の病気のこと、症状のこと、ステージ別の生存率のこと、家族のこと、子育のこと、仕事のこと、今のバブルの波の乗り方と降り方、NISAとiDecoのこと、暗号資産やデジタル元、ドル覇権の今後のこと、そして生きることと死ぬことについて、お酒もなしに語った。僕はこのタイミングで彼を繋げてくれた神様か運なのかに感謝した。感激した。
その彼が、昨晩から食べたモノをリバースして倒れた。聞けばGW中のBBQの焼肉が怪しいと言う。僕も同じ症状で1日2kg体重落としたのでわかる。これがいつ起きるかわからないのがこの病気の辛さのひとつ。こうして今日から絶食&下剤の苦行に入る予定が実質1日前倒しでのスタートとなった。全力で応援してる。
生き抜いて退院後も、1年後も5年後また会おうじゃないか!

2021年5月12日水曜日

短期苦行の終わりの始まり

 「そのベッドホン変わってますね。アタシもワイヤレスの、欲しいんですよねー」と看護師さん。

「骨伝導なので耳が空いてるでしょ?人に話しかけられてもちゃんと聴こえるので良いですよ。それより僕は一刻も早くワイヤレスな身体になりたい」
手術直後は5本の管で身体が繋がれて身動きひとつできなかった。
そして今日、最後の管がお腹から外れました。ワイヤレスな自由を手にしました!シャワーも浴びた!短期苦行の終わりが見えてきました。

2021年5月11日火曜日

綺麗ね

 消灯にむけて廊下の灯りが暗くなり始める。

その廊下の奥で点滴スタンドを支えにして窓を眺めるおばあちゃんが何か呟いてる。
ーー綺麗ねぇ、綺麗ねぇ
病棟近くのマンションの部屋の灯り。そのひとつひとつに誰かの暮らしがあるんですね。暖かいですね。ひとつひとつが大切で素晴らしいですね。
それを喜ぶあなたもキラキラしてます。
あたりが暗いほど小さな明るさが嬉しいです。
いろいろ足りないほどあるモノに気づけて嬉しいです。

動作と静止に対する身体の反応

 健康な身体では『動かないでいる』とだんだん居心地悪くなりますよね。今の僕はこの『動作と静止に対する身体の反応』が逆なんです。

例えば「寝返り」。初め呼吸がほとんどできないところからスタートするんです。呼吸に集中して他の臓器に肺のスペースを空けてもらうよう指令を出します。この時、臓器たちはゴロゴロと動き出して互いにメッセージを出し合ってるようです。『はたらく細胞』みたいに。
「あれ?盲腸居なく無い?」「やだ、小腸も様子おかしい」「こちら大腸、人員削減された!クソッ」とテンヤワンヤします。
でも5分ほどかけてだんだん楽になってくる。「OK心配するな!ないものは仕方ない。再配置で連携取り直しだ」とコミュニケーションを取ってるのがわかります。チームプレーのスポーツでひとり退場した後の戦略・戦術変えるようなイメージです。
このようにたかが『寝返り』でも勢いというか、決心が要るんですよね。腹筋も右半分目覚めてくれないし。新しい身体を使いこなすの一筋縄にいきませんが、毎日発見と進歩を実感できます。身体って頼もしいです。